園からのメッセージ

こころが根を張り、やがて大樹となる。
その土深くで、永遠にきらめくもの。

人のこころの成長を一本の木にたとえるならば、
幼児期は、その無垢な根っこをしっかりと大地に張りめぐらせる時代だと思います。
私たちにできることは、その大地の土を栄養ゆたかに育むこと。
木が安心して根を伸ばせるようにやわらかく耕し、
たっぷりと時間を与えること。ただ、それだけです。

栄養ゆたかな土とは、子どもたちが、ありとあらゆる実体験に出会える環境です。
当園でいえば、自然の息づかいを体いっぱいに感じられる森。
たくさんの友だちと過ごし、さまざまな感情をぶつけ、わかちあえる遊びの時間。
そのような経験の中から生まれる子どもたちの力には、
私たち大人には、はかりしれないものがあります。

根っこが育つ時代ですから、
花が咲いたり、実がなったりするようなわかりやすい成果はありません。
でも、土の中での育ちをじっと待ちつづけてくれる大人がいるということも、
その木をすこやかに育む、かけがえのない栄養になると信じています。
子どもたちが大人になったときには、
ここで過ごした記憶のほとんどが
こころの奥底にしずんでしまうことでしょう。
でも、ふとしたときに記憶に浮かびあがることもある。
そのとき、彼や彼女が、幸せな気持ちでこの時代を振り返ってくれたなら。
木陰に吹きぬける風の青い香りを。
森の真ん中で見上げる、木々にふちどられた空のかたちを。
愛に包まれて過ごした日々を、その温もりとともに思い出してくれたなら嬉しい。

太く、たくましく育った大樹のふもとには、
その土深くに、私たちが育んできた時代が眠っている…。
そのひとらしさを目覚めさせてきた、名もなき出来事の一つひとつが
子どもたちの集める大切なガラクタのように
きらきらと輝きながらひしめいている…。

「こどもの森」が誕生して、約30年。
ついこの前まで、ちいさな苗木だったのに。
いつの間にか大きく育った一本一本の木々を眺めながら、
そんなことを想像するのです。

園長有吉 時寛

理事長有吉 和寛

1974年の開園以来、子ども一人ひとりの個性を大切に、教職員、保護者の方々とともに、当園ならではの保育を築きあげてきました。子どものまっすぐなこころ、清く美しいこころ、友だちを大切にするこころなど、心の教育を中心に据えた「こひつじ保育」はこれからも変わりません。